伝達関数の計測とモード解析
伝達関数を計測することによって、測定点における振幅と加振点に対しての位相を見ることができます。測定物が線形性が強いのも例えば金属棒や板を自由吊りしたものなどは、1回目の計測データとN回目の計測データはほとんど変わらないのですが、一般的には摩擦やガタなど非線形要素を含む場合がほとんどです。このような場合は測定のばらつきや計測誤差を低減させるため平均化処理を行います。これはパワースペクトルの算術平均と同様でその誤差値は平均する毎に次第に一定レベルへ収束します。このときコヒーレンス関数を見ることにより加振エネルギーが測定点に対してどの程度寄与しているか確認することができます。
計測系の中に雑音が存在するとコヒーレンス値は低下します。また測定対象において非線形要素が存在する場合も同様にコヒーレンス値が低下します。私的ですがこのときの目安として0.9以上になるように測定方法などをチェックします。現実的には構造物の条件や、その知りたい周波数帯でコヒーレンス値が確保できるように支持条件や加振信号などを検討します。
さて計測した伝達関数は山、谷をいくつか持っている場合が多いです。
これは測定点の位置では振動しやすい周波数、しにくい周波数があるということです。
また同じ周波数(特定周波数)でも測定位置を変えればその大きさが変わるということで、振幅と同時に位相も変わっています。各測定点の特定周波数の大きさと位相を用いると特定周波数の振動モードの形を見ることができます。各点で計測された伝達関数は周波数成分のデータの羅列なので、全体的な特性(システム特性)を数式で表わしているわけでなく、分散した(離散)データの羅列にしか過ぎないのです。しかしながらこのデータ列は各周波数の質量M、バネ定数K、減衰定数Cを表わしていることになります。そこでこの伝達関数を振幅と 位相を変数としてカーブフィットを用いることにより、N次の分母とM次の分子の多項式として表わすことができます。
カーブフィットの簡単な手順は特定のピークの前後を計算範囲として指定して、ピークの個数を決めることで分子分母のM次N次多項式の次数を決めます。
初期の式からスタートし反復計算を繰り返し伝達関数に近似するように多項式の定数を求めます。もとめた式から特性方程式を導くことができます。特性方程式は先回説明しました自由振動の固有値(共振周波数)、固有ベクトル(モード形)としてモデル(M、K、C)を作成し特性行列で表わします。この特性行列を用いると振動モードのシミュレーションを行うことができます。
つまり物理モデルに変換できたことになり、この特性行列(特性方程式)はM、K、Cに対応することになります。
モード解析というと計測対象をM,K,Cで運動モデルを作成して固有値解析することにより、共振周波数、固有ベクトルからモード形を作成しますが、伝達関数を測定することはちょうどこの流れの逆向きになり、伝達関数の固有振動数とモード形から特性方程式、最終的に運動方程式に逆演算していることになります。
剰余質量と剰余剛性について
丸棒など連続体の場合無限に質量が存在しますが特性をもとめるモデルの計算では有限な質点はN個で打ち切ります。また伝達関数でカーブフィットを行う際も上限周波数、下限周波数を設定することで帯域制限し計算を行っていますが、計算上カットされた低域、高域のデーターはどのように評価されるのでしょうか。基本的には振動モードは無限の数を持っています。この打ち切られたモードを補正するための剰余質量(低域の省略による影響)、剰余剛性(高域の省略による影響)を用いてフィットさせた帯域の誤差を補正するようにしています。
(2004年11月18日発行メールマガジンより抜粋)