中学生の時に、波の性質を習いましたが、音響振動は基本的には考え方は同じで、これを難しくしているに過ぎません。中学の時に、重りとバネを持って振らして振動実験した覚えがあると思います。実際の車や建物などの振動はこれと同じ考え方をします。たしかに振動音響は難しいと見られ勝ちです。その理由は、発生している事象は単純な物理現象が多数同じに発生しているので、難解に見えるのです。
1自由度系
単純な1つの質量と1つのバネからお話しましょう。キッチンで使う秤を思い浮かべてください。簡単には図 1 のように“モデル 1”として表現できます。
<図1:1自由度系モデル=質量:M、バネ定数(剛性):k>
重たいものを動かそうとすると相当の力がいりますよね。これと同じで質量に注目すると重量Mが大きいと動きにくく、ゆっくりの動きとなります。軽くなると動きやすいので、早い動きとなります。またバネに注目してみましょう。柔らかいバネは良く伸び大きな振動になること、硬いバネを指で押すとあまり縮まないのに反発力が大きく、「力がいるな」と感じた経験をされたことがあると思います。硬いバネほど変位量は小さくても、反発力が大きいので元に戻ろうとする動きが早いといえます。バネの硬さ(強さ)をあらわすのにバネ定数 k が使われます。バネは力の大きさに比例して変位しますので、バネ定数は変位と力の比として表されます。バネの場合はバネ定数 k、力を F、変位を x、とすると次の関係式があります。
F = kx
k = x/F (単位:m/kg、m/N)
バネ定数はバネの場合に使われる用語ですが一般的には剛性という用語を使います。秤に最初だけ指で力を加えて放すと、秤は自由に上下振動を繰り返しながら次第に停止します。この自由な振動は秤の固有振動と呼び、1秒間に何回上下振動を繰り返すかいわゆる周波数(Hz)として表現した値を固有周波数といいます。固有周波数は計算で求めることができます。図 1 のモデルでは質量 M(kg)、剛性 k(m/kg)、固有振動数を f(Hz)とすると
f = 1/2π×√k/M (Hz)、(k/M は √ の中に入ります)
となります。
秤の振動は次第に減衰していき最終的には停止しますが、図 1のモデル では減衰させる要素がありませんのでいつまでも振動が持続します。
減衰の要素の性質を表す減衰係数Cを追加した図2のような“モデル2”を考えてみましょう。
<図2:減衰のある1自由度系モデル=質量:M、バネ定数(剛性):k、減衰係数:C>
減衰の要素は物質内部の原子分子の変位によってエネルギー損失を与える構造減衰や空気抵抗や車のショックアブソーバーなど気体流体の粘性による外部減衰があります。質量は秤で、剛性kは物性表や付加質量と変位の関係から測定できますが、減衰は構造減衰とその他の減衰に分けて計測できないのでひっくるめた総和として測定します。減衰に付いては別の機会に取り上げてお話します。
さて、1つの質量、1つのバネ、1つの減衰から構成されるモデルでは1つの特定の周波数しか持たないので1自由度系であると言います。
多自由度系
世の中にはこの1自由度系で代表されるものはたくさんあるのですが、高い搭を例にとると振動の固有周波数は複数持っていることがわかります。実際のものは1自由度系というよりも多自由度系として考えた方が一般的といえます。多自由度系とは何を表しているのでしょうか。
先の1自由度系のモデルの上に、もう1つ質量とバネを置いたモデルを考えますと図 3 のモデルとなり、これを2自由度系といいます。
FFTアナライザーでこの振動を測定してみますと M1 と M2 が同じ方向に上下に動く固有振動数と、M1 と M2 が互いに逆方向に上下に動く固有振動数の2つのパワースペクトルピークが分析できます。
<図3:2自由度系モデル=質量:M1、M2、バネ定数(剛性):k1、k2>
2自由度系にさらに質量とバネを増やしていくと、図 4 のようになりこれを多自由度系のモデルと言います。このことを拡張して考えていくと振動現象をあらわすあらわす方法として多数の質量と多数のバネで構成されたモデルを作成するとシミュレーションが出来そうに思われてきますね。実際、摩擦やガタなど非線形要素が無ければシミュレーションが可能です。
<図4:多自由度系モデル=質量:M1、M2、....., バネ定数(剛性):k1、k2、.....>
一般的に振動問題で問題になる周波数は低い場合が多いのです。それは機械を破損させたり音として放射される場合はある程度の変位量が必要だからです。たとえば地震が建物を揺らして破損させる場合を思っていただくと大きい変位は低い周波数であることが理解でき、問題となる周波数まで建物の振動特性がわかれば対策が必要かどうか検討するに十分なデーターといえます。
このようなことから必要かつ十分な性能を有する質量 M、剛性 k、減衰係数 C を N 個用意したN 自由度系モデルを考えればシミュレーションが可能ということがわかります。
(2004年1月22日発行メールマガジンより抜粋)