当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。
加速度検出器の仕様では、検出器で測定できる加速度値の下限値は定めていません。実際の下限値は、加速度検出器や解析装置の自己ノイズ、測定方法、測定結果にどの程度の精度を求めるかに依存します。
加速度検出器の検出器ノイズ
プリアンプ内蔵型(電圧出力型)の加速度検出器には検出器ノイズという仕様があります。振動がまったくない状態であっても加速度検出器からはこの値に相当する電圧信号(ノイズ)が出力されます。弊社のプリアンプ内蔵型加速度検出器のうちいくつかの製品の感度と検出器ノイズを 表1 に示します。一般に感度が大きい検出器の方が、加速度値に換算した検出器ノイズは小さくなります。
表1 プリアンプ内蔵型加速度検出器の検出器ノイズ (一例)
| 型式 | 感度 | 検出器ノイズ | |
| NP-3418 | 1.0 mV/(m/s2) | 20 μV rms 以下 | 0.02 m/s2 rms 以下 |
| NP-3331B | 5.0 mV/(m/s2) | 20 μV rms 以下 | 0.004 m/s2 rms 以下 |
| NP-3572(3軸) | 1.0 mV/(m/s2) | 40 μV rms 以下 | 0.04 m/s2 rms 以下 |
| NP-3574(3軸) | 10 mV/(m/s2) | 40 μV rms 以下 | 0.004 m/s2 rms 以下 |
検出器ノイズが 0.004 m/s2 rms、すなわち 4 mm/s2 rms の加速度検出器に 40 mm/s2 の加速度が入力された場合、その出力は平均値が 40 mm/s2、標準偏差が 4 mm/s2となる分布でばらつきます。単純に考えると精度は 10 % と言えますが、実際の精度は平均回数や測定方法に依存します。
電荷型加速度検出器に検出器ノイズという仕様はありません。ノイズの大きさは、検出器を接続するチャージアンプの入力換算ノイズレベルにより決まります。弊社のチャージアンプ CH-1200Aの入力換算ノイズレベルは 0.05 pC rms 以下です。この値と加速度検出器の電荷感度から加速度に換算した検出器ノイズがきまります。弊社の電荷出力型加速度検出器のうちいくつかの製品の感度とそこから求めた検出器ノイズを 表2 に示します。
表2 電荷出力型加速度検出器の検出器ノイズ (一例)
| 型式 | 感度 | 検出器ノイズ (入力換算ノイズ 0.05 pC 時) |
| NP-2106 | 0.035 pC/(m/s2) | 0.05 ÷ 0.035 = 1.43 m/s2 rms |
| NP-2110 | 0.16 pC/(m/s2) | 0.05 ÷ 0.16 = 0.3125 m/s2 rms |
| NP-2710 | 0.306 pC/(m/s2) | 0.05 ÷ 0.306 = 0.163 m/s2 rms |
| NP-2120 | 5 pC/(m/s2) | 0.05 ÷ 5 = 0.01 m/s2 rms |
加速度検出器の検出器ノイズのパワースペクトル密度
プリアンプ内蔵型3軸加速度検出器 NP-3574の検出器ノイズを実測した結果のパワースペク
トル密度 (PSD)を図1に示します。CH.1 (青)がNP-3574のX軸、CH.3 (赤)がNP-3574のZ軸です。CH.4 (緑)は DS-3000 の入力端子を50 Ω 抵抗で短絡して測定したものでDS-3000 自体の自己ノイズで、NP-3574と同じ電圧感度を設定し加速度値に換算してあります。
使用機器
NP-3574プリアンプ内蔵型3軸加速度検出器
DS-3000シリーズデータステーション
測定条件
周波数レンジ 800 Hz
サンプル点数 2048点
電圧レンジ 10 mV rms
平均時間 10 秒DCキャンセル: ON
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図1 プリアンプ内蔵型3軸加速度検出器の検出器ノイズのパワースペクトル(PSD)CH.1 (青): NP-3574 X軸、CH.3 (赤): NP-3574 Z軸、CH.4 (緑): DS-3000自己ノイズ
検出器ノイズを測定する目的でしたが、測定場所は一般的なオフィスですので暗振動の影響を受けています。5 Hz~80 Hz に暗振動と思われる振動が観測されています。CH.1 (NP-3574 X軸)のオーバーオールは 3.229 mm/s2 で検出器ノイズの仕様値 ( 4 mm/s2以下) を満たしています。CH.3 (NP-3574 Z軸) には検出器ノイズより大きな暗振動が観測されています。CH.4 (DS-3000自己ノイズ) は検出器ノイズの 1/100 程度ですので検出器ノイズの測定には影響していません。
なお、今回は DS-3000 の電圧レンジを一番小さい 10 mV rms レンジに設定して測定しました。この電圧レンジであれば DS-3000 の自己ノイズは十分小さくなります。電圧レンジが初期値のまま (1 V rms) や、電圧レンジが大きいと、DS-3000 データステーションの自己ノイズも大きくなるため、検出器ノイズ・暗振動・微小振動は測定できません。電圧レンジは実際に測定する振動の大きさに合わせて適切に設定する必要があります。
また、DCキャンセルはONにしました。解析装置に 0 V が入力された場合、解析装置はそれを 0 V と表示すべきですが実際にはわずかにずれます。このずれ量を残留オフセットと呼びます。今回の測定条件での残留オフセットの仕様は 0.14 mV (14 mm/s2 相当) 以下です。測定への影響が無視できないため、DCキャンセルによりこれを除去して測定しました。
加速度検出器の検出器ノイズの時間軸波形
プリアンプ内蔵型3軸加速度検出器 NP-3574のX軸の検出器ノイズを実測した結果の時間軸波形を 図2 に示します。
使用機器
NP-3574 プリアンプ内蔵型3軸加速度検出器
DS-300 シリーズデータステーション
測定条件
周波数レンジ 8 kHz
収録時間: 10 秒
電圧レンジ 10 mV rms
-
図2 プリアンプ内蔵型3軸加速度検出器の検出器ノイズの時間軸波形(X軸)
時間軸波形が 14 mm/s2( 0.14 mV) ほどプラス側にずれているのは DS-3000 データステーションの残留オフセット (DCオフセット) の影響だと思われます。今回の測定条件での残留オフセットの仕様は 0.14 mV (14 mm/s2 相当) 以下であり、その値とほぼ一致します。
時間軸波形がゆっくりと波打っているのは、低周波の暗振動だと思われます。
時間軸波形から加速度値を読み取る場合 (その1)
長さ10秒の検出器ノイズを実測した時間軸波形のデータを、長さ 1秒の時間軸波形 10個に分割し、分割したそれぞれに周波数 160 Hz、片振幅 40 m/s2の正弦波を加算しました。検出器ノイズがある状況で周波数 160 Hz、片振幅 40 m/s2、長さ1秒の正弦波の測定を計10回おこなった状況を模擬したデータが得られることになります。
長さ1秒の測定データの最初の正弦波1周期分 (62.5 ms) の間の時間軸波形の最大値と最小値を読み取り、その差を2で割り片振幅値を測定した結果を 表3 に示します。
表3 加速度片振幅の読取結果(正弦波1周期分の間の時間軸波形より)
| 測定回数 | 平均値 | 最大値 (mm/s2) | 最小値 (mm/s2) | 片振幅 (mm/s2) |
| 1 | 23.22 | 63.06 | -17.15 | 40.10 |
| 2 | 16.74 | 58.80 | -25.51 | 42.16 |
| 3 | 15.16 | 55.84 | -25.43 | 40.63 |
| 4 | 15.99 | 57.50 | -24.27 | 40.88 |
| 5 | 7.30 | 47.79 | -32.81 | 40.30 |
| 6 | -3.92 | 37.24 | -44.28 | 40.76 |
| 7 | 17.54 | 57.28 | -24.75 | 41.01 |
| 8 | 21.80 | 61.92 | -17.85 | 39.88 |
| 9 | 14.24 | 55.72 | -27.19 | 41.46 |
| 10 | 21.02 | 62.32 | -20.96 | 41.64 |
| 平均値 | 14.91 | 40.88 | ||
| 標準偏差 | 7.60 | 0.71 |
10回の測定の平均値は 40.88 mm/s2、標準偏差(ばらつき)は 0.71 m/s2 でした。おおむね正しい結果が得られています。
長さ1秒の測定データの最初の正弦波1周期分 (62.5 ms) の間の平均値は 表3 のとおり、-3.92~23.22 mm/s2 の範囲でばらつきました。これは解析装置の残留オフセットと暗振動の影響です。最大値もしくは最小値の値だけで振幅を評価してしまうと平均値の 0 からのずれが影響してしまうため、今回は最大値と最小値の差から片振幅を算出しました。
時間軸波形から加速度値を読み取る場合(その2)
前項と同じデータについて、長さ1秒の時間軸波形全体の最大値と最小値を読み取り、その差を2で割り片振幅値を測定した結果を 表4 に示します。
表4 加速度片振幅の読取結果(1秒間の間の時間軸波形の最大値より)
| 測定回数 | 平均値 | 最大値 (mm/s2) | 最小値 (mm/s2) | 片振幅 (mm/s2) |
| 1 | 21.14 | 70.23 | -26.73 | 48.48 |
| 2 | 19.12 | 67.85 | -28.45 | 48.15 |
| 3 | 15.66 | 63.39 | -33.19 | 48.29 |
| 4 | 10.10 | 60.55 | -41.26 | 50.91 |
| 5 | 0.30 | 49.90 | -48.85 | 49.37 |
| 6 | 5.09 | 60.76 | -47.60 | 54.18 |
| 7 | 17.55 | 66.56 | -32.69 | 49.62 |
| 8 | 20.04 | 67.10 | -28.72 | 47.91 |
| 9 | 16.45 | 65.22 | -35.05 | 50.14 |
| 10 | 12.38 | 62.32 | -36.63 | 49.48 |
| 平均値 | 13.78 | 49.65 | ||
| 標準偏差 | 6.48 | 1.76 |
10回の測定の平均値は 49.65 mm/s2、標準偏差(ばらつき)は1.76 m/s2 でした。160 Hzの正弦波ですので最大値と最小値(マイナス側の最大値)は1秒間にそれぞれ160回あり、検出器ノイズの影響でその値はばらつきます。そのような状態で160回の最大値をとってしまったため、本来の値 (40 mm/s2) より20 % 以上大きな結果が得られてしまっています。
実効値で評価する場合
前項と同じデータについて、FFT解析によりパワースペクトルを求め、そのオーバーオール値から片振幅値を求めた結果を表5に示します。周波数レンジ 8 kHz、フレーム長 1024 点の場合、1回のFFT演算に必要な時間軸波形の長さは 50 msです。1回分の時間軸波形データの長さは1秒ですので、オーバーラップ量 50 %で解析するとFFT演算39回分の時間軸波形を切り出すことができます。各測定回数に示す片振幅値はそれぞれ39回の平均結果です。
解析条件
周波数レンジ: 8 kHz
フレーム長: 1024 点
フレーム時間長: 50 ms
オーバーラップ量: 50 %
DCキャンセル: ON
表5 パワースペクトルオーバーオール値の計算結果
| 測定回数 | 片振幅 (mm/s2) |
| 1 | 40.062 |
| 2 | 40.138 |
| 3 | 40.176 |
| 4 | 40.138 |
| 5 | 40.102 |
| 6 | 40.150 |
| 7 | 40.139 |
| 8 | 40.239 |
| 9 | 40.143 |
| 10 | 40.170 |
| 平均値 | 40.146 |
| 標準偏差 | 0.044 |
10回の測定の平均値は 40.146 mm/s2、標準偏差(ばらつき)は 0.044 m/s2 でした。パワースペクトルのオーバーオールは加速度の2乗値により計算されるため、検出器ノイズの影響を受けにくくなります。2乗値に計算すると、信号の振幅が 40 mm/s2、ノイズの振幅が4 mm/s2の場合のそれらを合成した信号のオーバーオール値は √(402+42 )= 40.2 にしかなりません。ノイズより信号が10倍程度大きければ十分良い精度の結果得られます。
まとめ
今回は加速度検出器の検出器ノイズを測定した結果をご紹介しました。実測した検出器ノイズには暗振動や、残留オフセットが含まれていることを確認しました。
実測した検出器ノイズに、正弦波を加えたデータから、三通りの方法で正弦波の振幅を求めました。振幅を求める方法により、検出器ノイズの影響が変わります。
(2021年5月19日発行メールマガジンより抜粋)