これまで、3 回にわたって「振動計測の基礎」に関してお話してきました。今回はその 4 と
して、減衰比についてのお話となります。
減衰比ζは、振動の挙動に重要な役目を果たしており、自由振動(1 回目)では振動するか
否かまたは振動した場合での振動が止まる速さに影響を与え、強制振動(2 回目)では共振周
波数におけるピークの大きさに影響を与え、振動伝達率(3 回目)では共振周波数における
ピークの大きさや共振周波数を超えた周波数帯域での伝達率に影響を与えます。
今回(4 回目)では、FFT アナライザで実際に振動計測を行いその結果から減衰比ζを求め
る方法について説明します。
減衰を表現するパラメータは応用分野によっていろいろありますが、まず、対数減衰率か
ら求める方法を紹介します。
対数減衰率δは、自由振動の減衰波形の隣り合う振幅比の自然対数として定義されます。
なぜ、自然対数なのか? それはもちろん、図1にあるように、自由振動の振幅は指数関
数的に減衰するからです。
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図 1 減衰自由振動波形
図1の減衰自由振動波形 x (t)は、
.................................(1)
ωn=固有角振動数ζ :減衰比
ωd=ωn√1-ζ2 :減衰固有角振動数
:減衰周期
となります。
図1において、対数減衰率δは
.................................(2)
ここで、ζ<<1ならば
δ = 2πζ .................................(3)
次に、対数減衰率δの求め方ですが、まず、ヒルベルト変換の技術を利用して減衰波形の包絡線を求め、横軸を時間、縦軸は振幅の対数表示のグラフを描きます。(図2)
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図2 減衰波形の包絡線を求め、縦軸を dB 表示したグラフ
対数減衰率 δ は、減衰周期 Td に対する傾きだから、dB 表示が常用対数だということに注
意して、図2の直線の傾きより、
.................................(4)
ここで、
だから
.................................(5)
FFT アナライザ(DS-3000 シリーズ)のデルタサーチ機能を使って、(5)式から、対数減衰
率δを算出します。
さらに、(3)式から
.................................(6)
実測したデータと(5)式から対数減衰率δを算出して、(6)式から減衰比ζを求めることが出来ます。
図 3 は、ハンマリングして自由振動の減衰時間波形を計測して、それから対数減衰率を求めさらに減衰比を求めた例です。この図は、ヒルベルト変換の帯域制限機能を利用して、1つの共振周波数の減衰波形にしていることに注意して下さい。
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図3 減衰時間波形と包絡線データから対数減衰率と減衰比を求めた例
次に、周波数応答関数の共振ピークから半値幅法により、減衰比を求めます。
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図4 半値幅法を説明する図
1 自由度系の周波数応答関数(コンプライアンス)G(f )とすると、
.................................(7)
ここで、 n f :固有周波数 ζ :減衰比
図4において、共振周波数 fn の値 G(f)max から-3dB(パワーで 1/2、振幅で 1/√2)
となる点を f1 と f2、またΔf=f2-f1とします。
f1 と f2は近代的に fn ± ∆f / 2 とおけるので、 fnとの比は
.................................(8)
この値を (7) 式に代入して逆数をとると、
.................................(9)
また、最大値
は近代的に (7) 式より
となるから (9) 式に代入すると
...............................(10)
(10) 式を変形して
............................... (11)
パワーが 1/2 の帯域を使っているので、上記の(11)式で減衰比を求める方法を半値幅法(half-power bandwidth method)と呼びます。
半値幅法以外に、mdB 法も考えることが出来ます。この時は、
...............................(12)
ここで、
ちなみに、1dB の時は、k=1.97 2dB の時は、k=1.31 です。
半値幅法で、制振材料の評価パラメータで用いられる損失係数(loss factor)も求められます。履歴減衰を伴う減衰振動では、振動変位に比例する復元力を生じさせる複素弾性率 K’を定義して、実数部を K1、虚数部を K2とすると
K′ = K1 + jK2 = K1(1 + jη )= K1(1 + j tanδ)............................... (13)
ここで、
............................... (14)
となります。(図5) このηを損失係数と呼びます。複素弾性率 K’は、1 自由度系モデルでばね定数 k と粘性減衰係数 c の両特性を含んだものです。図 5 からわかるように、損失係数は、タンデルタ(タンデル)とも呼ばれます。
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図5 複素弾性率と損失係数
半値幅法から、損失係数ηは以下の式で求められます。
............................... (15)
............................... (16)
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図6 半値幅法による減衰比と損失係数の実測例
図 6 は、FFT アナライザを使ってハンマリング法で計測した FRF(周波数応答関数)から、半値幅法により減衰比と損失係数を求めた例です。
いろんなパラメータのまとめとして、減衰特性を表す各種パラメータ間の関係の一覧表が、下記の表 1 です。
表1 各種パラメータ間の相互関係
最後に、まとめです。
- 減衰比は、自由振動や強制振動や振動伝達率などで振動の挙動に重要な役目を果
たしています。 - 減衰自由振動波形から対数減衰率を算出して、それから減衰比を求めることがで
きます。 - 周波数応答関数データから、半値幅法により減衰比を求めることができます。
- 半値幅法で、制振材料の評価に用いられる損失係数もまた求まることができます。
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【参考】
- 「モード解析入門」長松昭男著 コロナ社(1994 年)
- 小野測器技術レポート「減衰特性をあらわす係数」
(2016年1月21日発行メールマガジンより抜粋)