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計測に関するよくある質問から - 第2回「ハンマリングによる周波数応答関数測定」

当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。前回はインパルスハンマを使用したハンマリング測定において、トリガーがかかるようになるまでの設定方法をご紹介しました。

ハンマリング測定においてよくいただく質問としては、前回ご紹介した「トリガーがかからない」の他に、「固有振動数が出ない」、「期待する周波数応答関数にならない」、「コヒーレンス関数が低い」といったものがあります。今回は、これらに対する対応方法をご紹介します。

ハンマリングによる周波数応答関数測定

ハンマリングにより周波数応答関数を測定する際の接続例を図1に示します。

対象物をインパルスハンマで打撃し、インパルスハンマからの力信号と、加速度ピックアップからの加速度信号から周波数応答関数を測定します。

  • 図1 インパルスハンマ、加速度検出器と解析装置の接続例
    図1 インパルスハンマ、加速度検出器と解析装置の接続例

A/Dオーバーと電圧レンジ

インパルスハンマや加速度ピックアップからの信号が解析装置の電圧レンジより大きかった場合は、A/Dオーバー(入力オーバー)になり、正しい結果は得られません。ハンマリング測定では複数回打撃し、それらの平均結果を求めますので、1回でもA/Dオーバーが発生すると正しい結果は得られません。

A/Dオーバーが発生すると、解析装置の入力チャンネルのLEDが赤く点灯します。何回か打撃し、どのチャンネルもA/Dオーバーがおきないように電圧レンジ等を調整してください。インパルスハンマで打撃する際は、ヘッドを一定の高さに置き、自重で落下させると一定の大きさで打撃を加える事ができます。

インパルスハンマや加速度ピックアップと解析装置の間に、電源ユニットやセンサアンプが接続されている場合は、それらで入力オーバーが発生していない事も確認してください。

解析装置に「A/Dオーバーキャンセル」等の機能がある場合、それをONにすると、A/Dオーバーが発生したときのデータが自動的に破棄されます。ハンマリングの際、打撃が弱すぎるとトリガーがかかりませんが、A/Dオーバーキャンセル機能が働くのは打撃が強すぎた場合です。解析装置のA/DオーバーLEDを監視していれば打撃が強すぎてA/Dオーバーが発生したのかが判断できます。

「A/Dオーバーキャンセル」の設定は、DS-3000シリーズの場合は[入出力設定メニュー]⇒[サンプル条件設定]⇒[A/Dオーバーキャンセル]で設定します。CF-9000シリーズの場合は [HOME]⇒[Input]⇒[Sample]⇒[Over Cancel]で設定します。

CCLD(センサ電源)

CCLD はConstant Current Line Drive (定電流駆動)の略で、インパルスハンマや加速度ピックアップなどのセンサに内蔵されたプリアンプに電源を供給する方式です。CCLDがOFFの場合、本来よりも非常に小さい(1/100以下など)信号が出力されます。パワースペクトルや時間軸波形のY軸スケールがAUTOに設定されていると信号が小さい事に気付きにくくなるため、スケールをDefaultやManualに設定しておくか、サーチカーソルで振幅の数値を読み取って確認してください。

解析装置によっては、センサを取り外すと「断線検知機能」が働いてCCLDがOFFになるものがあります。センサを取り付けていない状態で解析装置を起動するとCCLDが自動的にOFFになってしまい、その後でセンサを取り付けてもCCLDはONにはなりません。

トリガーがかからない場合や、パワースペクトルや時間軸波形の振幅が通常よりも小さい、コヒーレンス関数が低い場合などは、CCLDタイプのセンサを使っているのかどうかや、CCLDの設定がONになっているかを確認してください。DS-3000シリーズの場合は、[入出力設定メニュー]⇒[入力設定ダイアログ]で確認できます。CF-9000シリーズの場合は画面上部の表示(図2)か、[HOME]⇒[Input]⇒[Input Cond]と操作して表示されるダイアログで確認できます。

  • 図2 CF-9000シリーズのチャンネル状態表示例
    図2 CF-9000シリーズのチャンネル状態表示例

ウィンドウ関数(窓関数)

ハンマリングによる周波数応答関数測定で、ウィンドウ関数はレクタンギュラウィンドウ(矩形窓)を使用します。フォースウィンドウや、エクスポネンシャルウィンドウ(指数窓)を使う場合もありますが、ハニングウィンドウやフラットトップウィンドウを使う事はありません。

解析装置の初期設定はハニングウィンドウになっている場合が多いので、パワースペクトルや周波数応答関数が期待する波形にならない場合や、コヒーレンス関数が低い場合は、ウィンドウ関数の設定を確認してください。

平均化処理

ハンマリングによる周波数応答関数測定では、パワースペクトル加算平均モードを使用します。

解析装置を他の用途で使用した後などでは別のモードになっている場合がありますので、パワースペクトル加算平均モードになっている事を確認してください。

ダブルハンマとコヒーレンス関数

ハンマリングによる周波数応答関数測定では、正しく測定できているかを確認するのにコヒーレンス関数を使用します。インパルスハンマによる打撃力波形と、加速度ピックアップで検出した振動波形の間の相関が高いとコヒーレンス関数は1に近い値を示します。コヒーレンス関数は2回以上、平均化処理しないと求まりません。

図3-1、図3-2に正常時とダブルハンマ時の時間軸波形、パワースペクトル、周波数応答関数、コヒーレンス関数のグラフを示します。CH.1がインパルスハンマ、CH.2が加速度検出器です。ダブルハンマとは2度叩きの事で、ハンマのヘッドが対象物に2回以上あたる現象です。このような場合、正しい測定結果は得られません。

図3-2のCH.1 時間軸波形をみるとダブルハンマが起こっている事が分かります。時間軸波形ではダブルハンマが分かりにくい場合でも、パワースペクトルやコヒーレンス関数をみると判断がつきます。

図3-1のCH.1パワースペクトルのようになめらかに右下に下がっていくのが正しい打撃力波形のパワースペクトルです。ダブルハンマなどがあると、図3-2のCH.1パワースペクトルのように波打ったりします。また、右下がりに下がっていく途中にディップができたりする事もあります。コヒーレンス関数は正常な場合よりも低くなります。

何回か正常に打撃した後に、ダブルハンマなどの叩き損じがあると、コヒーレンス関数が急に悪化します。打撃するたびにコヒーレンス関数を確認し、変化に注意してみてください。または、意図的に2度叩きしたり、打撃する位置をずらしたりといった測定をおこなって変化を観測するのもよいと思います。

  • 図3-1 周波数応答関数測定時のグラフ(正常時)
    図3-1 周波数応答関数測定時のグラフ(正常時)
  • 図3-2 周波数応答関数測定時のグラフ(ダブルハンマ時)
    図3-2 周波数応答関数測定時のグラフ(ダブルハンマ時)

ケーブルの断線やセンサ等の故障

測定で正しい計測結果が得られない場合は、故障の可能性もあります。
トリガーをOFFにし、解析装置をスタートして、ケーブルやコネクタを軽く触ったときに時間軸波形に大きな信号やノイズが観測される場合は、ケーブルの断線の可能性があります。また、信号の大きさが以前の結果より小さい場合や、時間軸波形やパワースペクトルのノイズが大きい場合は、センサや解析装置の故障の可能性があります。

ただ、グラフが正常かどうか判断するのは難しいと思いますので、正常に測定できたときのグラフ画像や計測データをファイルに保存しておく事をお勧めします。また、データを比較する際は、グラフの形だけではなく、かならず数値で比較します。故障や設定・配線の誤りなどの場合、グラフの形は同じでも、値が小さくなる事があります。

まとめ

今回は、ハンマリングによる周波数応答関数測定において、正しい結果が得られない場合に確認すべき項目をいくつかご紹介しました。慣れないうちは一通りの項目を確認してみてください。設定や操作を間違えたり、叩き損じたりしたときのグラフの変化については、繰返し経験していただければ傾向が分かってくるのではないかと思います。

(2015年6月18日発行メールマガジンより抜粋)