通常、FFTアナライザ等の解析装置に入力できる信号は電圧信号です。
加速度・速度・力・音圧などの物理量を測定する場合は、それらの物理量を電圧に変換する検出器(センサ)を使用します。例えば、加速度の大きさ(m/s2)に比例した電圧信号を出力する加速度検出器があれば、その比例係数(感度)を使って、測定した電圧値を加速度に換算して表示する事ができます。
今回からは、様々な検出器(センサ)やアンプを使用した場合の解析装置の設定方法をご紹介していく予定です。
今回は、プリアンプ内蔵型加速度検出器をとりあげます。
FFTアナライザ等の解析装置は、通常、このような電圧値を物理量に単位換算する機能を持っており、単位校正機能と呼んでおります。また、この際の物理量の単位を一般化したものを工学単位(EU、Engineering Unit)と呼んでおります。単位校正機能の説明においては工学単位(EU)という用語が出てきます。実際に使用する際、振動の加速度を測定するのであれば“EU”を“m/s2”(メートル毎秒毎秒)に読み替えれば理解しやすいと思います。速度を測定する際は“m/s”(メートル毎秒)等、力を測定するのであれば“N”(ニュートン)等に読み替えます。
プリアンプ内蔵型加速度検出器とは
圧電素子を使用した加速度検出器に使われている圧電素子から出力される信号は電荷信号です。この信号のままでは電圧入力タイプの解析装置に入力する事はできないので、チャージアンプと呼ばれるアンプを使い電荷信号を電圧信号に変換します。
プリアンプ内蔵型加速度検出器は検出器内部にチャージアンプに相当する回路を内蔵したもので、検出器から電圧信号が出力されます。このタイプの加速度検出器を使用するには内蔵プリアンプに電源を供給する必要があります。当社のNP-3000シリーズ加速度検出器などは“CCLD”と呼ばれる電源供給方式を使用しております。
CCLDとは定電流駆動(Constant Current Line Drive)方式の事で、検出器とアンプ・解析装置との間の接続には、同軸ケーブルなど2線式の通常ケーブルを使います。検出器・解析装置メーカーによりIEPE、ICP等の名称・登録商標で呼ばれていますが、同じ方式です。
CCLD方式の加速度検出器は、CCLD方式に対応した解析装置であれば直接接続して使用することができます(図1)。CCLDに対応していない解析装置やデータロガー、オシロスコープなどの接続する場合は、CCLD方式に対応した(検出器に電源を供給する事ができる)センサアンプ等が必要になります。
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図1 加速度検出器接続例1
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図2 加速度検出器接続例2
プリアンプ内蔵型加速度検出器をCCLD対応解析装置に接続する場合
プリアンプ内蔵型加速度検出器(当社NP-3000シリーズ等)を、当社のFFTアナライザCF-7200/7200A、CF-4500や、マルチチャンネルデータステーションDS-2000、DS-3000シリーズに接続する場合の設定手順をご紹介します。
加速度検出器の出荷特性表や試験成績書で電圧感度を確認します。電圧感度が9.75 mV/(m/s2)と記載されていた場合、この検出器は1 m/s2の加速度を検出したときに9.75 mV(0.00975V)の電圧を出力する事を示します。
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図3 加速度検出器出荷特性表(一部抜粋)
解析装置の単位校正機能で、設定するEU値の単位として“EU/V”と“V/EU”が選べる場合は、“V/EU”を選びます。これは“EU”をm/s2に読み替えると、電圧感度をV/(m/s2)という単位で設定することを選んだ事になります。検出器の感度が9.75 mV/(m/s2)であれば単位をV(ボルト)に換算し、0.00975を入力します。
解析装置の単位校正機能に、“EU/V”の単位でしか数値を設定できない場合は、0.00975の逆数の102.56(m/s2)/Vを設定します。
また、あわせて、解析装置のCCLD機能をONにします。
以下に、当社製品での設定手順を紹介します。ここでは、CH1に検出器を接続した場合の操作方法を紹介しております。他のチャンネルの検出器を接続した場合は、同様に設定してください。
他の解析装置の場合も、同様な設定が可能だと思います。単位校正の機能がない場合は、測定して得られた電圧値と、電圧感度(1 m/s2の加速度を検出したときに何Vが出力されるか)の値から、加速度値を算出することができます。
- FFTアナライザ CF-7200/7200A、CF-4500の設定方法
-1.FFTアナライザに検出器を接続してから、CCLD機能(検出器に電源を供給する機能)をONにします。検出器が取り外されたり、ケーブルが断線すると、“断線検知機能"が働きCCLDがOFFになりますので、その際は検出器を接続してから再度ONにしてください。
-2.Y軸に表示する単位名として“m/s2”を設定します。本機種では上付きの“2”は入力できませんので、通常の“2”を入力します。
-3.電圧感度を、V/EUで設定します。電圧感度がmV単位で記載されていた場合は、V(ボルト)の単位に換算した値を設定します。
-4.単位校正機能をONにするため、“Y EU ON”をONにします。
FFTアナライザが停止状態の場合、これらの設定を変更しても表示されているデータには反映されません。これらの設定は、次に測定を開始したときに反映されます。
※ CF-4500は1ch FFTアナライザのため、CH1/CH2の階層はありません。
- DS-0221 FFT解析、DS-0250スループットディスクでの設定方法
-1.CCLD機能(検出器に電源を供給する機能)をONにするには、[入力メニュー]→[電圧レンジ設定]と操作し、電圧レンジ設定ダイアログで入力源をSensor(4.0 mA)に設定します。なお、検出器のCCLD(駆動電源)の仕様が2 mAまでである場合はSensor(2.0 mA)に設定します。
-2.単位校正機能を設定するには、[入力メニュー]→[単位、校正]と操作し、単位・校正ダイアログで、校正をON、単位名には“m/s2”を、物理値(EU値)には電圧感度を入力し、校正値の設定は“V/EU”を選びます。
- DS-3000 ESUFEELでの設定方法
-1.検出器を接続してから、[入力出力設定メニュー]→[入力設定]と操作し、入力条件設定ダイアログでCCLDをONにします。この設定をONにすると検出器には、4 mAの駆動電源が供給されます。検出器が取り外されたり、ケーブルが断線すると、“断線検知機能"が働きCCLDがOFFになりますので、その際は検出器を接続して再度ONにしてください。
-2.単位校正機能を設定するには、[入力出力設定メニュー]→[単位校正設定]と操作し、校正設定ダイアログで、EUをON、単位名には“m/s2”を、EU値には電圧感度を入力し、EUタイプは“V/EU”を選びます。単位名はドロップダウンリストから選択することもできます。
プリアンプ内蔵型加速度検出器をセンサアンプに接続する場合(その1)
FFTアナライザやデータロガー、オシロスコープ等の解析装置がCCLDに対応していない場合は、検出器と解析装置等の間にセンサアンプを接続します。
センサアンプが当社SR-2200/2210や、PS-1300のように、ゲイン(×1、×10や、+0 dB、+20 dB等)を設定するタイプの場合、検出器の電圧感度(単位はV/(m/s2))にゲイン倍率をかけた値を解析装置の単位校正機能で設定します。ゲインがデシベル値で表記されている場合は、+0 dBは1倍、+10 dBは3.16倍、+20 dBは10倍、+10 dBは31.6倍と換算します。
解析装置への設定内容は、CCLDをONにしないことをのぞけば、前節と同じです。
表1 ゲインが倍率で指定される場合のEU値の換算
| 検出器電圧感度 | アンプゲイン | アンプゲイン |
| 0.00975 V/(m/s²) | ×1 | 0.00975 V/(m/s²) |
| 0.00975 V/(m/s²) | ×2 | 0.0195 V/(m/s²) |
| 0.00975 V/(m/s²) | ×5 | 0.04875 V/(m/s²) |
| 0.00975 V/(m/s²) | ×10 | 0.0975 V/(m/s²) |
表2 ゲインがデシベルで指定される場合のEU値の換算
| 検出器電圧感度 | アンプゲイン | 設定する EU 値 |
| 0.00975 V/(m/s²) | +0 dB | 0.00975 V/(m/s²) |
| 0.00975 V/(m/s²) | +10 dB | 0.03081 V/(m/s²) |
| 0.00975 V/(m/s²) | +20 dB | 0.0975 V/(m/s²) |
プリアンプ内蔵型加速度検出器をセンサアンプに接続する場合(その2)
当社のAU-2100のように、検出器の電圧感度(入力感度)を設定でき、出力感度(出力レンジ)を入力感度とは別に設定できるタイプのセンサアンプをつないだ場合は、センサアンプの出力感度(出力レンジ)に設定した値を、解析装置の単位校正機能に設定します。
図4のように、複数の検出器を使う場合は、検出器ごとに電圧感度が異なります。このタイプのセンサアンプを使うと出力レンジを同じ値に統一することができます。なお、当社AU-2100は1チャンネル用ですので、検出器を3個使う場合はAU-2100が3台必要です。
図4 センサアンプの入力感度と出力レンジ
当社のAU-2100で検出器の電圧感度を10 mV/(m/s2)に設定した場合、表3で示した出力レンジ値を選択できます。出力レンジ値の単位は“EU/V”ですので、解析装置の単位校正機能で“EU/V”を選択し、出力レンジ値をそのまま設定します。“V/EU”を選択した場合は、出力レンジ値の逆数を求め、その値を設定します。
表3 出力レンジ値と、単位校正機能で設定するEU値
| 出力レンジ値 | 設定するEU値(EU/V) | 設定するEU値(V/EU) |
| 1(m/s2)/V 2(m/s2)/V 5(m/s2)/V 10(m/s2)/V 20(m/s2)/V 50(m/s2)/V 100(m/s2)/V |
1(m/s2)/V 2(m/s2)/V 5(m/s2)/V 10(m/s2)/V 20(m/s2)/V 50(m/s2)/V 100(m/s2)/V |
1 V/(m/s2) 0.5 V/(m/s2) 0.2 V/(m/s2) 0.1 V/(m/s2) 0.05 V/(m/s2) 0.02 V/(m/s2) 0.01 V/(m/s2) |
センサアンプの出力感度(出力レンジ)が、V/(m/s2)の単位(V/EU)で表記されている場合は、解析装置の単位校正で“V/EU”を選択し、出力レンジの値をEU値として設定します。
なお、センサアンプから校正用電気信号を出力できる場合は、この電気信号を使って単位校正をおこなうことが多いのですが、その手順につきましては次回以降にご紹介します。
まとめ
今回はプリアンプ内蔵型加速度検出器を使用する場合で、出荷特性表等に書かれた電圧感度を解析装置に設定する手順を紹介しました。
次回以降は、電荷出力型加速度検出器の単位校正手順や、センサアンプの校正信号や振動校正器を使用した単位校正手順を順次ご紹介していきます。
(2013年10月18日発行メールマガジンより抜粋)