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音の測定事例 - 第6回「FFT分析とオクターブバンド分析(その2)」

今回は前回(音の測定事例 - 第5回「FFT分析とオクターブバンド分析(その1)」)に引き続き、オクターブバンド分析と、FFT分析による束ねオクターブの2つの方法による分析結果を紹介します。

今回の分析対象は、オーケストラの楽音と掘削機の音の2つです。オーケストラの楽音は音圧レベルが66 dBから80 dBの範囲で変化する変動音です。掘削機の音は約74.4 dBの定常音です。

オーケストラの楽音と、掘削機音はそれぞれ次のような信号です。

  • 図1 楽音(上)と掘削機音(下)
    図1 楽音(上)と掘削機音(下)

分析結果のカラーマップによる比較(楽音)

図2にリアルタイムオクターブ分析の結果を、図3にFFT分析の束ねオクターブの結果を示します。リアルタイムオクターブ分析は1/3オクターブ、動特性(時間重み付け特性)は速い(125 ms)、周波数重み付け特性はZ(FLAT)でおこないました。FFT分析は周波数レンジ18.75 kHz、サンプル点数16384点、ハニングウィンドウ、周波数重み付け特性はZ(FLAT)でおこないました。

楽音は変動音ですが、横軸のスケールをこの程度(約18秒)のスパンで表示している限りは、2つの分析結果はほぼ同じような傾向を示しているのがわかります。ただ、測定値そのものは、このあとでご紹介するようにオーバーオールでも4 dB程度の差が出ています。

  • 図 2 リアルタイムオクターブ分析結果(楽音)
    図 2 リアルタイムオクターブ分析結果(楽音)
  • 図 3 FFT 分析の束ねオクターブ結果(楽音)
    図 3 FFT 分析の束ねオクターブ結果(楽音)

分析結果のカラーマップによる比較(掘削機音)

図 4 にリアルタイムオクターブ分析の結果を、図5 にFFT 分析の束ねオクターブの結果を
示します。リアルタイムオクターブ分析は1/3 オクターブ、動特性(時間重み付け特性)は
速い(125 ms)、周波数重み付け特性はZ(FLAT)でおこないました。FFT 分析は周波数
レンジ18.75 kHz、サンプル点数16384 点、ハニングウィンドウ、周波数重み付け特性は
Z(FLAT)でおこないました。

掘削機音は定常音ですので、同じような分析結果になりました。ただ、実際には個別の値
を見ると差異はあります。

  • 図 4 リアルタイムオクターブ分析結果(掘削機音)
    図 4 リアルタイムオクターブ分析結果(掘削機音)
  • 図 5 FFT 分析の束ねオクターブ結果(掘削機音)
    図 5 FFT 分析の束ねオクターブ結果(掘削機音)

オールパス・オーバーオールのタイムトレンドの比較(楽音)

リアルタイムオクターブ分析結果のオールパス値はサウンドレベルメーター(騒音計)で
表示される音圧レベル値と同じ方法で測定した値です。騒音計での音圧レベルもしくは
オールパス値を測定する機器やソフトウェアがない場合、かわりにFFT 分析のオーバー
オール値を測定する事があります。FFT 分析のサンプル点数などを調整すると、ある
程度似通った結果を得ることが出来ます。

リアルタイムオクターブ分析結果のオールパス値と、FFT 分析のオーバーオール値のタイム
トレンドを図6 に示します。リアルタイムオクターブ分析は1/3 オクターブ、動特性(時間
重み付け特性)は速い(125 ms)、周波数重み付け特性はA でおこないました。FFT 分析は
周波数レンジ18.75 kHz、サンプル点数は16384 点、ハニングウィンドウ、周波数重み付け
特性はA でおこないました。図7 には、動特性10 ms と、サンプル点数2048 点での分析結
果もあわせて、グラフの一部を拡大したものを示します。

図 6 では、動特性(125 ms)とFFT フレーム時間長(本条件では約340 ms)の影響により
2つの分析結果には時間差がありますが、この時間差を無視するとおおむねタイムトレンドは
一致し、差は最大で4 dB 程度です。図7 に示したように、動特性やサンプル点数を変えると、時間変動の滑らかさが変わり、結果は大きく変化します。

  • 図 6 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド1(楽音)
    図 6 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド1(楽音)
  • 図 7 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド2(楽音)
    図 7 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド2(楽音)

オールパス・オーバーオールのタイムトレンドの比較(掘削機音)

リアルタイムオクターブ分析結果のオールパス値と、FFT 分析のオーバーオール値のタイム
トレンドを図8 に示します。リアルタイムオクターブ分析は1/3 オクターブ、動特性(時間
重み付け特性)は速い(125 ms)、周波数重み付け特性はA でおこないました。FFT 分析は
周波数レンジ18.75 kHz、サンプル点数は16384 点、ハニングウィンドウ、周波数重み付け
特性はA でおこないました。図9 には、動特性10 ms と、サンプル点数2048 点での分析結
果もあわせて、グラフの一部を拡大したものを示します。
図 8 分析方法や動特性・サンプル点数の値により変動幅が異なりますが、いずれも74 dB 程
度の定常音が計測できていることがわかります。

  • 図 8 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド1(掘削機音)
    図 8 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド1(掘削機音)
  • 図 9 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド2(掘削機音)
    図 9 オールパス・オーバーオールのタイムトレンド2(掘削機音)

等価騒音レベル・束ねオクターブの加算平均の比較

リアルタイムオクターブ分析結果の等価騒音レベル(15 秒間の平均値)と、FFT 分析の束
ねオクターブの加算平均結果(15 秒間の平均値)を図10、図11 に示します。リアルタイム
オクターブ分析は1/3 オクターブ、動特性(時間重み付け特性)は速い(125 ms)、周波数
重み付け特性はA でおこないました。FFT 分析は周波数レンジ18.75 kHz、サンプル点数は
16384 点、ハニングウィンドウ、周波数重み付け特性はA でおこないました。

動特性(速い(125 ms))や、FFT フレーム時間長(本条件では約340 ms)よりも十分長い
時間の平均演算をおこなうと、分析方法による差はほぼなくなります。楽音、掘削機音い
ずれについても160 Hz 以下では1.7 dB 程度の差がある帯域がありますが、200 Hz 以上の帯
域での差は0.6 dB 以下でした。

  • 図 10 等価騒音レベル・束ねオクターブの加算平均(楽音)
    図 10 等価騒音レベル・束ねオクターブの加算平均(楽音)
  • 図 11 等価騒音レベル・束ねオクターブの加算平均(掘削音)
    図 11 等価騒音レベル・束ねオクターブの加算平均(掘削音)

まとめ

今回はオクターブバンド分析と、FFT 分析による束ねオクターブの分析方法について楽音
と掘削機音の分析結果を紹介し、2 つの分析結果にどのような差が出るかをしめしました。

リアルタイムオクターブ分析器がない場合に、FFT アナライザによりFFT 分析をおこない
束ねオクターブによりバンドデータを求める場合がありますが、分析方法が異なるので一
般に結果は一致せず、その差は分析対象信号の性質や分析条件によって変わってきます。

データを比較する場合は同じ分析方法で分析するのが基本ですが、やむを得ない場合は、
今回ご紹介したように2つの分析方法による結果を比較し、どの程度の差が出るかを比較
する必要があります。
次回(音の測定事例 - 第7回「FFT分析とオクターブバンド分析(その3)」)には、衝撃音の分析結果を紹介する予定です。

(2013年6月20日発行メールマガジンより抜粋)